
Q.東筑高校での生活はどうでしたか。
―――変な人たちと関わるのがめちゃめちゃ面白かったです。楽しかった。自分じゃ思いつかんような考え方とか、思想とか急に出してくるじゃないですか。びっくりするけど、すごい面白いなと思って。
(インタビューより抜粋)
京都大学の推薦入試に、東筑高校からは直近3年(令和6年度現在)で2名の合格者を輩出しています。今回はそのうちの1人にインタビューを行いました。彼女は本校吹奏楽部と校外のオーケストラ団体に所属し、3年の夏まで活動を続けました。東筑ならではの環境を生かしながら勉強だけでない高校生活を送り、その経験をアピールしながら京都大学に合格しました。
(1)京都大学法学部の合格を見た瞬間はどんな気持ちでしたか。
(合格を)見た瞬間は良かったって感じました。
(2)入試内容はどのようなものだったか教えてください。
まず、1次試験は書類で、志望理由書のような「学びの設計書」というものと、英語資格、高校時代に取り組んだ成果物、調査書です。次の2次試験は小論文で、英語で書かれた課題文を読んで日本語でまとめるもの。そして、最後に共テ(編注:大学入試共通テスト)です。
―――ちなみに英語資格はどの外部検定試験を?
英検(編注:実用英語技能検定)のことを何も知らなくて。結果が出るまでに時間がかかるとか。めっちゃ焦ってギリギリで2回申し込んだんですけど、2回とも落ちて・・・。そのとき、校長先生から、他の外部検定試験は合格じゃなくても得点が出るからそれを受けて大学に出したら、とアドバイスをもらって、TOEFLを受けました。
―――なるほど。それって何点くらいだったの?
120点中60点で、半分でした。
―――それって英検だったらどのくらいの水準なんだろう?
英検2級から準1級の間くらいらしいです。(※「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」(文部科学省))
―――中学校時代から英語が得意だったの?
全然。中学校の英語に困ったことはないけど、秀でていたわけでもなく、英検を受けたこともなかったくらいです。
(3)出来栄えはどうだったか教えてください。
(英語小論文は)読むのはめちゃめちゃ読めて。書くのは2問あって、1問が要約なんですけど、その要約の方は読めたから書けて。2問目の方は、絶対1ヶ所変なこと書いたなっていうのは、もう確実にあったんですけど、それ以外はまあまあみたいな感じです。
(4)なぜこの入試形式で受験しようと思ったのか教えてください。
もともと全然乗り気じゃなくて。共テとか他の勉強に加えての推薦入試だから。勉強できる時間が減るし、どうせ落ちると思ってて。書類の段階で落とされると思ってたから、それなら他のことやってた方がいいと思ってました。でも先生にも結構すすめられたのと、親にも「チャンスが1回増えると思えば?落ちても一般もあるし。」って言われて、確かに、と思って受けました。
(5)高校での教科学力の成績はどうだったんですか。
いい方ではあるんですけど、天才ではないし、間違いなく私より他に勉強できる人はいっぱいいるかなって言う感じで、めちゃくちゃ自信があったとかそんなのはないですね。
―――教科の偏りとかはあった?
めちゃめちゃありました。国語ができて、逆に数学がめちゃめちゃできない。だから、数学を頑張って克服しようと思って、ある程度のレベルに上げられたんですけど、模試の偏差値のグラフは乱高下でした。
―――3年次の京都大学模試は受けてた?
はい。なぜか京大模試の数学はまだ取れたんです。時間があるからかわかんないけど。逆に英語が、結構減点されて得点が伸びなくて。結果的に国語・数学で得点をとってました。
―――そのときの判定とかどうでしたか。
最初はD判定で。一番良くてB判定でしたね。
(6)出願前、学校ではどのような指導を受けましたか。
志望理由書(編注:「学びの設計書」。以下同。)が主なものだったので、それをいろんな先生に添削してもらいました。その志望理由書を書くときに、その文が小説チックになってしまっていたので、適切な文体に直すのが私的に一番できなかったんですよね。なんか、この表現は装飾的な感じになるから別にいらないよねみたいな。
(7)受験前、学校ではどのような指導を受けましたか。
課題文が英語なので、英語の先生に今までの後期入試で実施されていた特色入試の過去問を2回ぐらい添削してもらいました。
―――数としてはそんなに多くはないよね?
そうですね。
―――あえて推薦の勉強は極力少なくしようとしてた?
指定字数が多いので解答を書くのは時間がかかるじゃないですか。文を書くのは得意な方だなと思ったので、あまり書かずに、英語の勉強をするために京大の英語の長文の赤本を10個解いて、自分で添削してました。
(8)高校時代の取り組みについて、出願や入試でアピールした内容を教えてください。
部活とか、それとは別にオーケストラに入ってたんですけど、それです。
―――それは地域というか市民団体として?
はい、北九州市のオーケストラに入ってて。どれか1つだけでもちゃんと集中できる人って、きっと他のことにもちゃんと集中できるじゃないですか。その集中力を部活にもオーケストラにも、どこにも向けてやりきって、勉強もちゃんとスッと入ればいいかなとは思ってました。
―――なるほど。具体的にこれをやったっていうよりか、取り組み方を気を付けたみたいな感じ?
オーケストラと並行しての受験勉強は、どっちも結局中途半端になるなって自分の容量的に思ったので、夏はオーケストラに注いで、受験勉強は秋・冬でどうにかしようと思ってて。あと、マインドが相当楽観的っていうかすごいポジティブというか、もうすごいいいことしか考えてない感じの脳みそなので。それは役に立ったかなと思います。
―――部活・オーケストラはいつまで?
部活が8月頭で終わりで、オーケストラは2学期始業式の前日に演奏会があって、そこまでです。
―――それで楽観的にいられたんだ。だって周りとちょっと違ったでしょう?
そうです、周りには夏が受験の天王山だろうって言われるから・・・。詰め込みの時期だと思うんだけど。私には合ってないなって思って。夏も勉強はしてたけど、そこまでガーッてやるのは、今は違うなと。
(9)高校時代にどのようなことに力を入れてきたかを教えてください。
吹奏楽部では、演奏をやるのは前提ですが、音楽を指導するグループと、生活面を主に指導するグループがあって、私は音楽指導の方の一番上の立場だったから、自分が上手じゃないと仕事ができないと思って。自分の練習をちゃんとしないといけなくて。でも、生徒会もしてたから・・・。両立とかが一番難しくて。模試は1・2年のときは半日だと思うんですけど、半日あって、でもオケの本番が近いから、夜間の練習が小倉であるんですけど、電車に乗って行って。で次の日もオーケストラだから、みたいな忙しさがあったんです。とはいえ、模試の復習とかは絶対にやりっぱなしにしてたら駄目だなっていうのを、もうだいぶ早い段階で気づいてたので、その合間をぬってやっていました。忙しい時の方が勉強に集中できるタイプで。暇な時の方が何していいかわからなくて、詰められたスケジュールがあったから、できたかな。
―――結果的にいろんなことを並行してできるのがいい環境だったんじゃないかと?
そうですね。自分には合ってた感じです。
―――逆に部活とかオーケストラを引退した後の生活的にはどうだったの?
その直後はもう全然やる気はなくて。けど周りはもともと夏の時点で先に受験勉強に入る人が多いじゃないですか。だから、さすがに模試の結果とか見て、「・・・うん。」と思って。共テ模試とか受けたときに、700点前半とかやったから。上げないと駄目だなって思って。でも10時間くらい勉強をするのは集中力がもたんとかじゃなくて無理というか。逆に効率が自分の中では下がるなと思って。やりたいとこまでやってやめるっていうのをずっと続けてったら、担任の先生に「いつ本気を出すんか。そろそろ本気を見てみたいんやけど。」って言われて、ちょっと反省して。そっから12月後半から1月にかけては、自分の中で多分一番人生の中で勉強したぐらい・・・本当に長時間できないんですけど8時間とか9時間とか10時間できる日もあるぐらいでやれてたから、良かったかな。
―――寸暇を惜しんで勉強するみたいな感じじゃなかったんですね?
それができなくって。できる人ってそれもう才能じゃないですか。だから、一心に努力する、みたいな才能が、別に自分にそんなにないなって思ってて。要領だけ良かったんですよ、すごく。覚えたら忘れないとか、それがあったから、定期テストとか普通にできちゃったけど、受験ってやっぱ努力量もいるから、さすがにって思って。周りがすごく勉強してたので、はい。それもあってやっぱ焦りもありって感じです。
―――結果的に周りに良い意味で流された側面も多少なりともあるみたいな
そうですね、じゃないとやりません(笑)
(10)進学して大学生活でやりたいことを教えてください。
まず、京都大学ってオーケストラがすごい有名で。大阪公演と京都公演するくらいのちゃんとしたところなんですよ。でも入ったらそっちに力を注ぎすぎて留年するかもみたいな噂もあるんですけど。でも今のところ入ろうかなと。音楽は続けたいし、多分高校よりは、時間があると思うので、うまくできるかなと今のところは思ってます。あとは、いろんなところっていうか、新しい価値観とかを入れるためにはやっぱ人と話すとかも大事だし、いろんなとこ見てまわるとかも大事やなって思うので、新しいことをするって意味で短期留学とかも視野に入れてもいいのかなと思ってて。新しいことって漠然としてるけど。何か興味のあることとかは、ちゃんと最初の一歩は踏み出すようにして、合わんかったら辞めるみたいな感じで、とりあえずいろんなものに手を出そうかなと思ってます。
―――今のところ候補とかあったりする?
アメリカとかはちょっと治安が悪いのがこわいので、どっちかというと、のんびりしたところ、オーストラリアとか日本人留学生が多そうなところに行きたいなと思ってて。司法の面から言うと、国際法とか世界によって全然死刑制度とかも違ってたりするので、その法律の条文を読むために主要な言語は学んどきたいなって思うから、英語力をとりあえずあげたいですね。そんなに今得意じゃないので。
(11)将来やりたいことは何ですか。
中学生のときからずっと検察官になりたくて。だから学部もすぐ決められたんですけど。だからもうそれが第1というか、検察官になるっていうのがとりあえずの目標。検察官になって何をしたいかって言われたら、さっきも言ったけど死刑の問題とか、少年犯罪の問題とか、いわゆる正解が一つに決まるわけじゃないよね、みたいな問題に対してちゃんと自分の考えを持って、どうしたらいいんだろうねっていうのを考えられる検察官になってみたいなと思ってます。
―――検察官とか法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)ってどっちかというと法を運用する人ですよね。死刑制度だったり少年法だったりに疑問を持ったりすると、立法からアプローチする人もいると思うんだけど、なぜそれで検察官?
んー・・・。検察官に興味を持ったのが、小学校のときに、キムタクの『HERO』というドラマをみて。フィクションっていうのはわかってるけど、いいなと思ったんです。昔から正義感とかが割と強い方だったこともあって、検察が一番向いてるんかなと思って。法曹界に関われるし。いいなと思って選びました。裁判の判例とか見るの好きなんですけど、それを見てたら裁判官がどういう判断を下したのかということについても、結構面白いなって思ったりはするんですけど、でも検察かなみたいな。
―――高校生のうちにそんなこと考えたことなかった。
もともと、すごい少年犯罪についての興味が深くて。湊かなえさんの『告白』を読んで、もう一時期それしか考えてないときがあって。そんときに少年が起こした犯罪集みたいなのをずっと見てて。そっから判例見るようになったんです。自分の好みというか、好きって言ったらあれかもしれんけど、ちょっと関心がある分野をみたいな。民事裁判とかは興味ないです。割と重大な事件なのに、死刑じゃないとか、いうものの考え方が気になる。
(12)東筑高校での生活はどうでしたか。
東筑高校は、基本めっちゃ楽しくて。もともと入った理由も、家から近いのと、一番偏差値が公立では高いのと、あと変人というか、私と同じ穴のムジナがいっぱいいるっていうか。波長が合う人がいっぱいいそうだから入って。予想通り、個性は違えど合う人がいて、面白いなって。そういう人に興味を持つタイプなので、変な人たちと関わるのがめちゃめちゃ面白かったです。楽しかった。自分じゃ思いつかんような考え方とか、思想とか急に出してくるじゃないですか。びっくりするけど、すごい面白いなと思って。
(13)本校を目指す中学生へのメッセージをお願いします。
高校受験のときに勉強した習慣っていうのは、勉強の仕方とかも含めて、今後に絶対に繋がってくるっていうか、勉強をする習慣をつけてないと、いざやるってなったときにできないし、やる気はあってもやり方がわからないとか多いから。自分なりのスタイルをちゃんと立てとかないといけないので。さすがに中学生でそこまで自分に合ってるものに気づくっていうのは難しいと思うけど、とりあえずその頑張る時期は頑張らないけんのだよっていうことをちゃんとわかってないと。高校受験で頑張ってたら、頑張った経験を思い出して高校時代もいけると思うけど、頑張ってなかったら高校に入ってはじめて頑張るわけじゃないですか。それはちょっと難しいかなと思って。
あとは人に頼ることも大切かな、と思います。前にも言った通り私は圧倒的に数弱だったので数学が得意な友達に教えてもらったり、逆に国語を教えたりしてました。ひとりで頑張らないといけないことももちろんあるんですけど、みんなで頑張るのも案外いいもんだよってことを覚えていてほしいです。大学受験にも通ずるところはあると思うので。